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釣り場 : 熊本県

Writer : 編集部

Residence : 大分市

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初心者がボートチニングに挑む

2019年 9月 4日 21時頃

チニング、私が以前住んでいた東京では、ほぼ通用しない釣り方だった。チヌ狙いの釣り人が多い割にチヌの個体数が少なく、シーバスルアーにチヌが掛かって来たことも一度として無かった。チニングが成立するには、おそらく釣り場のチヌ密度が大いに関係していると思われる。ルアーを積極的に追うラージマウスバスでも、ルアーに手を出してくるのは、その場に居るバスの約3%程度に過ぎないという。チヌの場合は更に低いはずだ。

チニングが盛んな大分県乙津川下流で、川に黒々と群れるチヌを見た時、私はそれがチヌであると思えず、全てテラピアだと思い込んでいたほどである。皮膚感的に、もはや「チニング」の発想が無い。これじゃいかんというんで、数回天草のチニングポイントで試しにやってみたが、アタリすら無しのスーパーオデコに終わっている。じゃあ、天草はチニングできないんじゃないか? というと、そんなことは無く、シーバス狙いで仕立て船を出せば、毎回1枚はルアーでチヌをキャッチしている。

訳が分からなくなってきた。「ルアーでチヌ、釣れるの? 釣れんの?」もはやそこからの話である。この夏こそ本格的に手を出すべきか? いやいや、チニングなど釣り業界が作り出した幻想にすぎず、俺だけはフェイクニュースに踊らされまいと身構えるあまり「チニング幻想説」まで脳内に浮上し始めた頃、東京から弟が来ることになった。「去年、チヌが釣れたルアー船にまた乗ろう」。そういう話になり、船長に予約の電話を入れると、9月頭の時点で、今まさにチヌがヒットしていると言う。そのような経緯で、私もチニング幻想説を脳内奥深くに押し込んで、船上の人となることになった。

9月4日、朝6時。中潮の底辺りから出船。ルアー船「MAGICAL」は朝焼けの中、白波を蹴立ててポイントへ向けひた走る。船長はバストーナメントに頻繁に出場するルアーマンである。その人がチニングのポイントに案内し、船を付ける。しかも、今一番熱いターゲットがチヌである。期待は否応なしに高まった。シーバスが出ることで有名な天草五橋をくぐり、岸からチニングできる松島を横目に全力疾走を続けた船は、朝焼けの光の中、朝霧を頂く岩礁の岬に着いた。

船に驚いたサギが飛び立ち、そのまま海面に波紋を広げるシコイワシの群れをついばみ始める。水面にはイワシを食いに来た魚のライズ、釣れる気しかしない。しかし、こんな時こそ気合いを入れて真剣にやらないと時合いを逃してしまう。弟とポッパー、シンキングバイブレーション、ミノー、ジグ、とっかえひっかえルアーを繰り出してチヌのバイトを待つ。

やがて、弟のフローティングミノー、ショアラインシャイナーにアタリが来た。9フィートのルアーロッドがしなり、ドラグが唸りを上げる。釣り上げられたのは、いぶし銀の鱗を纏う40cm程のチヌ。私も後を追うべく、自作ルアーをとっかえひっかえして、試作ジグスプーンに替えた時に、微かなアタリがあった。トップには出なかった。ミノーには出た。おそらくタナが深いと予想して、ルアーを数秒潮下に流してから周囲を泳ぐイワシのスピードに倣って、ゆっくりとストレートに巻いてみた。すると、すぐに竿が引き絞られるアタリ。1枚目である。慎重を期して、口切れしない様努めてゆっくりヤリトリしたが、ハリはしっかりとチヌの口角を捉えており、ルアー選択はこれで間違いないことが伺えた。

スプーンでも釣れるのである。いや、多分、今日はたまたまこれで合ったのだろう。何しろ、底をうごめく虫エサから水面に浮かぶスイカまで、地域によって千差万別の特エサがあるチヌのこと。今食べているイワシにシルエットが近いスプーンやミノーを選んで食付いてきたのだろう。私のジグスプーンでもう1枚キャッチした後、場所移動。日が高くなるとイワシの姿も少なくなり、スプーンにはダツのヒットとヒラ(ターポンに近い魚)のバラシがあったのみ。船長曰く、日が高くなったらトップの方が出るというので、二人してポッパーにチェンジ。

私はアメリカ製の名品「ポップR」を投げたが、弟は名前も不明な「中華謎ポッパー」を投げた。「チヌ、ナメ過ぎだろそれ」と思ったが、その日最後の水面炸裂は中華謎ポッパーが得た。チヌ、面白い魚ではないか。地域と時期によって千差万別の顔を見せ、常に予想の斜め上を行く反応を見せてくれる。この辺、ちょっとバスフィッシングに似ている。今後の更なる解明に期待大だ。

その日は激流の三角瀬戸でシーバスも狙ってみたが、遠くに暗雲が見えたところで、早上がりする事になった。船長が手早く血抜きしてくれたチヌをクーラーボックスに収め、家路に就く。チヌは磯臭いという。何かとマダイと比較されるからそうなるが、早めに内臓やエラを取ってしまえば、身に付いている臭みはスズキと同じぐらいである。ならばと、身に張りがあるうちに薄造りにした切り身を氷水で絞め、洗いにする。もう半分の身は昆布に1時間挟んだ昆布締めに。昆布締めする間、炭火で豪快にチヌを塩焼きにする。チヌが焼ける頃、酒宴の支度がすべて整い、そのまま乾杯と相成った。

洗いのシコシコした身は、噛むほどに旨味が広がる。対して、しっとりした濃厚な味わいの昆布締めは寿司ネタとしても行けそうだ。荒磯イメージそのままの塩焼きをひと摘まみ、ほのかな磯の香りに、むしろこれも味の一つだとすら思える。タックルはシーバスの奴でもいい、オデコになりそうだったら他の魚を狙ってもいい。チヌはいつでも射程圏内に居る。チャンスがあったら、再び狙ってみたいと思える魚だ。

HN/妖怪熊河童・記
洗いのシコシコした身は、噛むほどに旨味が広がる。対して、しっとりした濃厚な味わいの昆布締めは寿司ネタとしても行けそうだ。荒磯イメージそのままの塩焼きをひと摘まみ、ほのかな磯の香りに、むしろこれも味の一つだとすら思える。タックルはシーバスの奴でもいい、オデコになりそうだったら他の魚を狙ってもいい。チヌはいつでも射程圏内に居る。チャンスがあったら、再び狙ってみたいと思える魚だ。

HN/妖怪熊河童・記

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