チクゼンハゼ、シモフリシマハゼ Gymnogobius uchidai/Tridentiger bifasciatus
ハゼ釣りと言えば、庶民の釣りであり大衆の味である。5月ごろから晩秋まで楽しめ、手頃な大野川の河口や大分川の河口でできるため、ひと昔前はハゼ釣りの釣り人で賑やかだった。 しかし、年々そのハゼ釣りを楽しむ釣り人も少なくなり、様変わりしていった。2年前まで行われていた大分市民ハゼ釣り大会では、釣り上げ検量したハゼをそのままゴミ箱に捨てている風景も見かけ、嘆かわしく思ったのだが、そんな釣り人からは「ここのハゼを食べる気がしない」との声が返って来たからどうしようもない。これも時代と振り上げた拳をどこに向ければいいのか困ったのを思い出す。
竹内始萬が「江戸前の釣り」という著の中で、「昔のハゼ釣りにはいろいろな魚が釣れたが、近代化とともに魚の種類は減り、最後に残ったのがハゼだ」と嘆いた後に、久しぶりにハゼ釣りに出掛けると、埋め立て工事が進められさらに嘆く文章を残しているが、前記した話をしたら、竹内始萬はなんと答えるだろう…。
大分県で絶滅危惧種として挙げられているのは、「チクゼンハゼ」と「シモフリシマハゼ」の2種。どちらも全国的に広く分布するハゼの仲間であるが、河口・沿岸域の護岸工事や干潟の埋め立て工事によって生息地が減少し、絶滅の危険性が高くなっている。
たかがハゼ、されどハゼ、「近代産業の発展、近代都市の建設の前にはハゼ釣りの興亡などいってはいられないといえばそれまでのものですが、それだからといってハゼ釣りなどどうでもいいような扱いをされていることに、愛惜とは別に諦め切れないような、何か腹立たしいものをかんじずにはいられないのです」と竹内始萬も嘆くように、ハゼ釣りの楽しみを奪われつつある釣り人の声が年々大きくなっている。今回をもって、魚釣りの対象となる魚であり、なおかつ「レッドデータブックおおいた」に掲載された魚は、すべて網羅した形となるが、書けば書く度に失われつつある自然の悲鳴が耳に響く。最後に同じく竹内始萬の嘆きでこのシリーズを完結したい。
?いい文化、本当の文化は自然との調和の上に築かれねばならないはずだ。文化発展のために自然状態を犠牲にするのは、文化の名による暴力だが、しかもいまの多くの文化人と称するものは、ここになんら省みるところがない。それは、本当は文化を装おう野蛮人なのだ?
「釣りの日本的性格と近代化」 著・竹内始満より抜粋
| 選定理由 | 北海道から九州全域に広く分布する種であるが、本県では2河川でのみその生息が確認できた。河口・沿岸域の護岸工事や干潟の埋立などにより失われた生息地が多くなり、絶滅の危険性が高くなっている。 |
| 県内分布 | 高山川及び番匠川の河口域/山国川水系河口域 |
| 分布域 | 北海道有珠湾、千葉県、兵庫県、福岡県、長崎県、大分県、宮崎県?鹿児島県 北海道?九州、沿海州、朝鮮半島、中国、台湾 |
| 生息環境 | 河口域/河口の汽水域?内海の海水域 |
| 現 状 | 高山川と番匠川の各河口域でその生息が確認されている。国内で広く分布する種であるが、県内では山国川水系の支流河口域で1個体が確認されている。 |







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